頸動脈狭窄 (けいどうみゃくきょうさく) 脳へ血液を送る首の血管が、動脈硬化で狭くなる状態
このページのまとめ
頸動脈(けいどうみゃく)は、心臓から脳へ血液を送る首の太い血管です。動脈硬化で血管の内側に脂のかたまり(プラーク)がたまり、通り道が細くなった状態を頸動脈狭窄 といいます。
多くは自覚症状がなく 、健診・人間ドックや、ほかの目的で受けた検査で偶然見つかります。当院では頸動脈エコー (首に超音波をあてる検査。放射線の被ばくはなく、痛みもほとんどありません)や、首の血管を写す頸部 MRA で調べられます。
治療は、薬と生活 の管理がすべての土台です。その上で手術やステントを「足すか」を一人ひとり検討します。見つかった=すぐ手術、ではありません 。
ただし、片方の手足が動かない・ろれつが回らないなどの症状が出たときはまったく別 で、緊急の対応が必要です。
▶ 症状が出たときは? 緊急のサインはこちら
目次
ABOUT 頸動脈狭窄とは 首の太い血管の内側が、動脈硬化で細くなった状態
頸動脈は、心臓から脳へ血液を送る首の左右にある太い血管 です。
この血管の壁に、年月をかけて脂のかたまり(プラーク )がたまると、血液の通り道が細くなります。これが頸動脈狭窄 です。狭さは「何%狭い」という形で表され、数字が大きいほど強い狭窄を意味します。
狭くなりやすい人の背景
高血圧・脂質異常症・糖尿病 などの生活習慣病がある
喫煙 の習慣がある、または長く吸っていた
年齢を重ねている (動脈硬化は誰にでも少しずつ進みます)
心臓や足の血管にも動脈硬化を指摘されたことがある
頸動脈の狭窄は「首だけの問題」ではなく、全身の動脈硬化のサイン でもあります。見つかったときは、体のほかの血管もあわせて考えます。だからこそ、血圧・コレステロール・血糖をまとめて整えること が、首にも心臓にも足にも同時に効きます。
脳梗塞とのつながり
頸動脈が狭くなると、脳梗塞(脳の血管が詰まる脳卒中)につながることがあります。道すじは大きく 2 つです。
① プラークのかけらが飛ぶ
首から脳へ、かけらが流れていく
プラークの表面がくずれると、そのかけらや血のかたまりが血流に乗って脳へ流れ 、細い血管を詰まらせることがあります。頸動脈狭窄で脳梗塞が起こるときの、代表的な道すじです。
② 血液の量が足りなくなる
通り道が細く、脳への血が足りなくなる
狭窄が強くなると、その先の脳へ届く血液の量そのものが不足 し、脳の一部が酸素不足になることがあります。血圧が下がったときなどに症状が出ることがあります。
i 狭窄がある=必ず脳梗塞になる、ではありません
症状のない狭窄では、狭さが 50% 以上あっても、脳卒中が起こるのは1 年で 100 人に 1〜2 人 (0.5〜2%)です1 。
1 年で脳卒中が起こる方(1〜2 人) 何も起こらない方(98〜99 人)
ほとんどの方は何も起きませんが、年月を重ねると積み上がっていく数字です。また、この「0.5〜2%」は 50% 以上をひとまとめにした数字で、実際には狭さが強いほど起こりやすくなります2 。
狭さの程度 脳卒中の起こりやすさ(症状なしの場合)
中等度(50〜69%) 起こりにくい(高度よりずっと低い)2
高度(70% 以上) 起こりやすくなる2
なお、脳梗塞が起こるときは、狭くなった血管が血液を送っている側の脳に起こります。脳と手足は左右が入れかわっているため、右の首が狭ければ症状は左の手足に出ます。
ULTRASOUND どうやって見つかるか 首にあてる超音波検査(頸動脈エコー)で、痛みなく調べられます
頸動脈狭窄は自覚症状がないことが多いため、多くは検査で偶然見つかります 。中心になるのが頸動脈エコー(超音波検査) で、首に器具をあてるだけの検査です。放射線の被ばくはなく、痛みもほとんどありません 。エコーのほか、当院の MRI で首の血管を写す頸部 MRA でも調べられます。
頸動脈エコーや頸部 MRA でわかること
血管の壁の厚さ(動脈硬化の進み具合の目安)
プラークの有無や大きさ
血管の狭さ(狭窄)の程度
実際の画像では、正常な血管と狭くなった血管の違いがはっきり分かります(当院で撮影した画像です)。
正常
壁がなめらかで、血液の通り道が広く保たれています(点線は壁の厚さの測定)
プラークによる狭窄
プラークで通り道が狭くなり、血流(色の部分)が細くなっています
狭窄部の輪切り
丸点線が血管の太さ。血流が残るのは矢印の点だけで、かなり進んだ例です。
まず頸動脈エコー
当院で実施できます。放射線の被ばくはなく、痛みもほとんどありません 。狭さの程度やプラークの様子を確認します。
必要に応じて、脳と血管をくわしく
当院の頭部 MRI・MRA で脳そのものの状態や脳の中の血管を、頸部 MRA で首の血管そのものを、あわせて確認できます。手術やステントを検討する段階では、狭さの程度をこれらの検査で改めて確認 します。
全身の危険因子もあわせて確認
血圧・血糖・コレステロール など、動脈硬化を進める背景を一緒に調べ、管理の方針を立てます。
WARNING SIGNS 「症状がない」と「症状がある」 同じ狭窄でも、意味と対応の急ぎ方がまったく違います
頸動脈狭窄でいちばん大事な分かれ道が、その狭窄が原因と思われる症状が出たことがあるかどうか です。症状が出たことのある狭窄を症候性 、まったくない狭窄を無症候性 と呼びます。
症状なし(無症候性)
落ち着いて
症状が出たことがない狭窄
健診などで偶然見つかったものの多くがこちらです。すぐに手術と決まるわけではありません 。まずは薬と生活 の管理を土台にし、時間をかけて方針を検討します。
あわてる必要はありません
薬と生活の管理が土台
手術・ステントは個別に検討
症状あり(症候性)
急ぎます
脳梗塞やその前ぶれを起こした狭窄
脳梗塞や、その前ぶれ(一過性脳虚血発作=TIA)を起こした狭窄です。症状がある 場合は再発の危険が高く、血流を回復させる治療(手術・ステント)を積極的に検討 します。
受診・対応を急ぎます
症状が消えても必ず受診を
発症から日が浅いほど効果が大きい
血流を回復させる治療を積極的に検討
この症状が出たら、ためらわず119番
片方の手足が急に動かない・力が入らない
顔の片側がゆがむ・ろれつが回らない・言葉が出ない
片方の目が急に見えなくなる (カーテンが下りるように暗くなる)
これらは脳梗塞や、その前ぶれ(一過性脳虚血発作=TIA)のことがあります。症状が短時間で消えても「治った」ではありません 。消えた場合も必ず受診してください(→ TIA のページ /脳梗塞のページ )。強い症状があるときは、ためらわず 119 を。
TREATMENT 治療の選択肢 薬と生活の管理が土台。その上に手術・ステントを「足すか」を考えます
治療の組み立て方は、症状の有無にかかわらず共通です。まず全員に共通の土台 があり、その上に血流を回復させる治療を足すかどうか を個別に検討します。
気になるカードをタップ すると詳しい説明が開きます
① 治療の土台
薬と生活の管理
狭さの程度にかかわらず、まずここから 。動脈硬化そのものの進みをおさえる部分です。
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血圧・コレステロール・血糖を目標の範囲に保ち、禁煙・体重・運動を続けます。血液を固まりにくくする薬は出血のリスクもあわせて考える必要があるため、全員が一律に飲む薬ではなく、状態を見て使うかどうかを決めます。
血圧・血糖の管理
コレステロールを下げる薬
血液を固まりにくくする薬(必要に応じて )
禁煙・体重・運動
② 足すかを検討
血流を回復させる治療
全員に行うものではなく、一人ひとり必要かどうかを判断 します。方法は 2 種類あります。
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どちらが向くかは、体の状態や血管の形で変わります。処置そのものにもリスクがあるため、治療で得られる利益と見くらべて決めます。
首を切ってプラークを取り除く手術(頸動脈内膜剥離術・CEA)
血管の内側から広げ、細い網目の筒(ステント)を入れて広さを保つ処置(頸動脈ステント留置術・CAS)
処置自体のリスクもあわせて考える
「薬と生活」の管理は、年々成績が良くなっています
手術の効果を確かめた試験は 1990〜2000 年代のものです。当時に比べて薬と生活の管理は大きく進歩し、近年の研究では、薬と生活の管理だけでも脳卒中の発生がはっきり低く 報告されています3 4 。
手術・ステントを検討する目安(ガイドライン)
Q1 その狭窄が原因の症状(脳梗塞や TIA)が、これまでに出たことはありますか?
ある(症候性)
狭さが中等度以上(およそ 50% 以上) であれば、手術やステントを積極的に検討 します。発症から日が浅いほど効果が大きいため、早めの受診・検討 が大切です。軽度の場合は、薬と生活の管理が中心になります1
ない(無症候性)
Q2 狭さの程度は?
軽度〜中等度
手術やステントは行わないことが勧められています 1
高度(およそ 70% 以上)
まず薬と生活の管理の効果を十分に検討 したうえで、検査で脳卒中のリスクが高いと判断された場合に、手術やステントを考慮することが妥当 とされています1
手術とステントのどちらを選ぶか は、体の状態や血管の形などによって決まるとされています1 。
これはあくまで検討を始める目安 です。「何%以上なら手術」と狭さの程度だけで決まるものではありません 。年齢・持病・血管の形・ご希望をふまえて一人ひとり相談して決めます。
最近では、症状のない強い狭窄について、薬と生活の管理だけの場合 と、手術やステントを加えた場合 を比べた最新の研究(2026 年報告)も出ています4 。その結果の読み方や「手術かステントか」の考え方は、こちらのコラム でくわしく解説しています(このページの最後にもご案内があります)。
OUR CLINIC 当院でできること 院内の頸動脈エコー・MRI で「調べる→管理する→必要なら橋渡し」
当院は、頸動脈エコー と頭部 MRI・MRA を院内で行えます。健診で狭窄を指摘された方も、生活習慣病で通院中の方も、そのままご相談いただけます。
調べる — 頸動脈エコー・頭部 MRI
狭さの程度やプラークの様子、脳そのものの状態を確認します。いずれも放射線の被ばくはなく、痛みもほとんどありません (MRI は体内の金属など、受けられない場合があります)。
管理する — 薬と生活の土台づくり
血圧・コレステロール・血糖の管理と、禁煙・運動・体重などの生活の見直しを、長く続けられる形 で一緒に整えます。生活習慣病のページ もご覧ください。
見守る — 定期的に変化を確認
狭窄の進み具合を定期的に確認し、変化があればその時点で方針を見直します 。
橋渡し — 必要なときは専門施設へ
手術やステントを検討する段階になれば、連携先の専門施設をご紹介 します。処置後の管理は当院で継続できます。
首の血管が気になる方は、当院の頸動脈エコーでご相談ください
緊急
脳梗塞を疑うサイン
片方の手足が急に動かない
ろれつが回らない・言葉が出ない
片方の目が急に見えなくなった
すぐ119に電話
注意
症状が出て、消えた
手足の力が入らず、短時間で戻った
片方の目が一時的に見えなくなった
ろれつが一時的に回らなかった
症状が出てから間もないとき(とくに 48 時間以内)は急ぎます。 診療時間内はお電話を、夜間・休日は救急外来を受診してください。
0942-42-1155 に電話
相談
調べたい・心配
健診で「頸動脈が狭い」と言われた
生活習慣病があり、血管を調べたい
喫煙歴が長く、動脈硬化が心配
保険が使えるかどうかは、健診結果や症状によって変わります。受診時にご説明します。
WEB予約・アクセス
FAQ よくある質問
健診で「頸動脈が狭い」と言われました。すぐ手術ですか?
A. 症状がなければ、すぐ手術と決まるわけではありません。まず薬と生活の管理が土台で、手術やステントを足すかは個別に検討します。
① まず薬と生活の管理から
血圧・コレステロール・血糖の管理と、禁煙・運動・体重の見直しがすべての土台 です。近年は、以前の研究より脳卒中の発生が低く報告される ようになっています3 。
② 手術・ステントは目安をふまえて個別に
症状のない狭窄では、軽度から中等度なら手術やステントは行わないことが勧められています 。高度な狭窄では、まず薬と生活の管理の効果を十分に検討したうえで、検査で脳卒中のリスクが高いと判断された場合に考慮することが妥当 とされています1 。年齢・持病・血管の形なども総合して 検討します。
③ 放っておいてよい、でもありません
あわてる必要はありませんが、管理を続けること が大切です。定期的に状態を確認していきましょう。
症状がないのに、どうして治療が必要なのですか?
A. 症状のない狭窄でも、狭くなった側の脳に脳卒中が起こることがあるためです。狭さが強いほどその傾向が高くなります。
① 症状がなくてもリスクはゼロではありません
症状のない狭窄では、狭さが 50% 以上あっても、脳卒中が起こるのは1 年におよそ 0.5〜2% とされています1 。同じ状態の方 100 人のうち、1 年で 1〜2 人ほどという数字です。ほとんどの方は何も起きませんが、年月を重ねると積み上がる数字でもあります。
② 狭さの程度によって大きく違います
狭さが強いほど脳卒中は起こりやすくなり、中等度(50〜69%)ではこれよりかなり低い ことが示されています2 。ご自身の狭さがどのくらいかで、意味あいは変わります。
③ だからこそ、薬と生活の管理を続けます
動脈硬化そのものを抑える管理が、長い目で見ていちばん積み重なる備え になります。
頸動脈エコーはどんな検査ですか?痛くありませんか?
A. 首に器具をあてて超音波で見る検査です。放射線の被ばくはなく、痛みもほとんどなく、当院で受けられます。
① 放射線の被ばくはなく、痛みもほとんどありません
ベッドで横になり、首にゼリーを塗って器具をあてるだけです。体への負担がほとんどない検査 です。
② 壁の厚さ・プラーク・狭さがわかります
血管の壁の厚さ、プラークの有無や大きさ、通り道の狭さの程度を確認できます。
薬はいつまで飲み続けるのですか?
A. 動脈硬化の管理は続けることが大切です。自己判断でやめると脳梗塞のリスクが高まることがあるため、必ず主治医にご相談ください。
① 「治って終わり」の治療ではありません
動脈硬化は長い時間をかけて進むため、管理も長く続けること が前提になります。
② 中止・減量は必ずご相談を
飲みにくさや副作用が気になるときも、自己判断で中止せず にご相談ください。合う形に調整できることがあります。
手術やステントは当院でできますか?
A. 検査・薬と生活の管理・経過の見守りは当院で行い、手術やステントが必要な場合は連携先の専門施設をご紹介します。
① 検査・管理・見守りは当院で
頸動脈エコー・頭部 MRI での評価と、薬と生活の管理、定期的な確認を継続して行えます。
② 処置が必要なときは専門施設へ橋渡し
首を切って取り除く手術(頸動脈内膜剥離術・CEA)や、内側から広げる処置(頸動脈ステント留置術・CAS)は、設備の整った連携先の専門施設 で行われます。処置のあとの管理は当院で引き継ぎます。
症状が出たけれど、すぐに消えました。受診しなくてよいですか?
A. 受診してください。症状が消えても「治った」ではなく、脳梗塞の前ぶれ(TIA)のことがあります。
① 消えても必ず受診を
片方の手足の力が入らない・ろれつが回らない・片方の目が見えないといった症状は、短時間で消えても脳梗塞の前ぶれ のことがあります(→ TIA のページ )。
② 症状が出た狭窄は「症候性」として急ぎます
症状が出たことのある狭窄は、血流を回復させる治療を積極的に検討 する対象になります1 。発症から日が浅いほど効果が大きい ため、受診も検討も急ぎます。
③ 症状が強いときは 119 を
迷っている時間が惜しいのが脳卒中です。少しでも怪しければ 119 を優先してください。
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監修
院長 堤 健二(脳神経外科専門医・医学博士) 医師 芝原 友也(神経内科専門医・脳卒中専門医・認知症専門医・総合内科専門医・医学博士)
最終更新日
2026-07-21
参考文献・ガイドライン(4 件)
日本脳卒中学会 脳卒中ガイドライン委員会 編. 脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2025〕. 協和企画; 2025.(頸動脈狭窄症に対する頸動脈内膜剥離術・頸動脈ステント留置術の適応、P88)
Howard DPJ, Gaziano L, Rothwell PM. Risk of stroke in relation to degree of asymptomatic carotid stenosis: a population-based cohort study, systematic review, and meta-analysis. Lancet Neurol 2021;20(3):193-202. PMID: 33609477.
Reiff T, et al. Carotid endarterectomy or stenting or best medical treatment alone for moderate-to-severe asymptomatic carotid artery stenosis (SPACE-2): 5-year results. Lancet Neurol 2022;21(10):877-888. PMID: 36115360.
Brott TG, et al. Medical Management and Revascularization for Asymptomatic Carotid Stenosis (CREST-2). N Engl J Med 2026;394(3):219-231. PMID: 41269206.
本ページは頸動脈狭窄に関する一般的な医学情報の提供を目的としており、個別の診断・治療方針を示すものではありません。掲載した数値は集団全体の統計的な傾向であり、ご自身の判断基準ではありません。症状や経過には個人差があります。片方の手足が急に動かない・ろれつが回らない・片方の目が急に見えなくなるといった症状があるときは、様子を見ずにためらわず 119番 を。症状が短時間で消えた場合も、必ず受診してください。