認知症 (4大病型:アルツハイマー型・レビー小体型・前頭側頭型・血管性) 4 大病型から治せる原因まで一貫した診療
このページのまとめ
認知症は、記憶・遂行機能・注意・言語・視覚認知・社会認知などの認知ドメインが2領域以上で持続的に低下 し、日常生活の自立性が損なわれた状態を指します。
原因疾患はさまざまで、最多のアルツハイマー型認知症(AD) に加え、レビー小体型(DLB)・前頭側頭型(FTD)・血管性(VaD) の4大病型を中心に、混合型や治療可能な原因(治せるもの忘れ)を含めて鑑別します。
AD では 抗Aβ抗体療法 (レカネマブ・ドナネマブ)が選択肢になりつつあり、早期発見 が改善幅と人生設計を左右します。当院では院内 MRI・神経心理検査・採血をワンストップで行い、認知症医療センター・抗Aβ抗体療法認定施設へ確実につなぎます。
⚠ 急に進行する/意識変容を伴う認知低下はこちら
こんな症状はありませんか?
同じことを何度も繰り返し 聞く・話す(数分前を覚えていない)
料理・買い物・服薬の段取り ができなくなった
「物を盗られた」と家族を疑う/質問のたびに介護者を振り返る(head-turning sign)
具体的で色鮮やかな幻視 が見える/調子に日内変動が大きい(DLB を疑う)
性格が変わった/脱抑制 ・無関心・常同行動が前景に出る(FTD を疑う)
脳卒中の既往がある/段階的に 悪化してきた(VaD を疑う)
いずれの症状も、ご本人よりご家族が先に気づく ことが多いものです。「年のせい」と決めつけず、診療所の段階で評価する価値があります。
5人に1人
65歳以上の認知症有病率2
60〜70%
認知症のうちアルツハイマー型が占める割合1
45%
リスク因子の管理で予防可能とされる認知症の割合3
認知症は加齢に伴う避けられない宿命 ではありません。難聴・高血圧・運動不足・喫煙・抑うつ・社会的孤立・LDLコレステロール・視力低下 など、生活習慣・健康管理で予防または進行抑制ができる因子 が増えてきています。
認知症の主な病型 4 大病型と混合型・治せる原因
病型ごとに症状の出かた・進行のしかた・治療の組み立てが異なります。まずは何が前景に出るか(記憶障害/幻視・パーキンソニズム/性格変化/脳卒中既往) で大きく振り分けます。
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AD / アルツハイマー型認知症
最多 60〜70%
記憶障害から始まる緩徐進行
「同じ話を何度も繰り返す」「最近のことを覚えられない」が年単位でゆっくり進む、もっとも多いタイプ。
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「最近のことだけが抜け落ちる」のが最大の手がかり。年単位でゆっくり 進むため、ご本人もご家族も「歳のせい」と感じやすく、気づきが遅れがちです。次のような気づきが続くときに疑います。
同じ話・同じ質問を何度も繰り返す (数分前の会話を覚えていない)
「財布を盗られた」など物盗られ妄想 がご家族に向く
質問されるたびに介護者の顔を振り返る (head-turning sign)
遠い昔の記憶は比較的保たれ、最近の出来事だけ が苦手になる
DLB / レビー小体型認知症
頻度2〜3位
幻視+パーキンソニズム+RBD
「いない人や虫が見える」「日によって受け答えがしっかりしたりぼんやりしたり」「手が震える・歩きにくい」が重なるタイプ。
幻視・認知の動揺・パーキンソニズム・睡眠中の異常行動 がそろうのが手がかり。1 つだけだと別の病気と紛れますが、複数が重なるとレビー小体型を強く疑います。
具体的で色彩豊かな幻視 (「子どもが座っている」「虫がいる」など。約 8 割で出現)
受け答えが日によって違う (しっかりした日とぼんやりした日が交互に)
夢に合わせて寝言で叫ぶ・手足を激しく動かす (RBD。発症の数年〜10 年以上前から先行することも)
手の震え・小刻み歩行・転倒しやすさ などパーキンソン症状(約半数)
FTD / 前頭側頭型認知症
若年発症が多い
人格変化・脱抑制が前景
もの忘れより「人柄が変わった」「マナーが守れない」「同じ行動を繰り返す」 が先に目立つ、比較的若い世代にも多いタイプ。
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「もの忘れ」より性格・行動・ことば の変化が先に出るのが最大の手がかり。比較的若い世代(50〜60 代)でも起きるため、「うつ」「更年期」と誤解されやすい点に注意します。
マナーが守れない・人前で不適切な発言 などの脱抑制が目立つ
家族や物事への関心が薄れる・共感性が落ちる
同じ場所に毎日同じ時間に行く・甘い物ばかり食べる などの常同行動・食行動の変化
言葉が出にくい・物の名前が出ない のが先に目立つタイプもある
VaD / 血管性認知症
15〜20%
脳卒中・小血管病による認知低下
脳梗塞や脳出血のあとに、階段状にガクッと もの忘れや判断力の低下が進むタイプ。手足の麻痺やろれつの悪さを伴うことも。
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脳卒中の既往と段階的な悪化 がそろうのが最大の手がかり。アルツハイマー型のような「年単位の緩徐進行」ではなく、「ある日を境にガクッと落ちる」エピソードが繰り返されます。
脳梗塞・脳出血のあと、もの忘れや判断力がガクッと落ちた エピソードがある
悪化が階段状で、しばらく安定したあとまた悪化 するパターンを繰り返す
手足の麻痺・ろれつの悪さ・歩行障害 が認知低下と並行している
高血圧・糖尿病・心房細動など血管リスクの管理が中断 されている期間がある
関連する病型や、除外が必要な原因
MIXED / 混合型
AD+VaD(または+DLB)
高齢になるほど、アルツハイマー型と血管性が同時に 起きていることが多く、両方を一緒に治療していく必要があるタイプ。
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高齢になるほど「アルツハイマー型」と「血管性」が同時に起きている ことが多く、剖検研究でも純粋な単一病型より混合型の方が多いと報告されています。次のような特徴があるときは混合型を念頭に置きます。
年単位の緩徐進行に加えて、脳卒中エピソードを境にガクッと低下 した時期がある
もの忘れに加えて、手足の麻痺やろれつの悪さ などの巣症状を伴う
画像で海馬萎縮と白質病変が両方 みられる
高血圧・糖尿病・心房細動などの血管リスク因子 が並行している
TREATABLE / 治せるもの忘れ
見逃さない
iNPH/CSDH/甲状腺/B12/うつ
治療で良くなる「もの忘れ」 が隠れていることがあります。最初に必ずこれを除外することが、もの忘れ外来の役目です。
「もの忘れ」と思われていたものが治療で改善する病態 であることがあります。これらを見逃さずに拾い上げることが、もの忘れ外来の最初の仕事です。
もの忘れ外来受診者の 9〜13% で原因が見つかる
頭部 MRI+採血(TSH/FT4・B12・葉酸)でスクリーニング
シャント術・穿頭術・補充療法・抗うつ療法で改善が期待できる
病型ごとに使う薬・避ける薬・連携先 が変わるため、最初に丁寧に振り分けることが診療の質を決めます。軽度認知障害(MCI) の段階で気づければ、生活習慣介入と早期治療で進行を遅らせる 余地があります。
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受診から診断までの流れ
問診と神経学的診察で病型のあたりをつけ、頭部 MRI・スクリーニング採血・神経心理検査 を組み合わせて鑑別を進めます。AD で抗Aβ抗体療法を検討する場合は、専門認定施設 での Aβ 病理確認(PET/髄液)と ApoE 検査が必要となります。
問診
発症のしかた(緩徐 vs 段階的 vs 急進性)/進行スピード/随伴症状(幻視・RBD・パーキンソニズム・脱抑制・脳卒中既往・抑うつ)/服薬歴・家族歴を丁寧に聴取します。ご家族の同伴 をお願いしています。
神経学的診察院内で実施
パーキンソニズム(無動・固縮・姿勢反射)/巣症状(麻痺・構音障害・失語)/前頭葉徴候(把握反射・口尖らし反射)/歩行(小刻み・開脚・すり足)/腱反射。
認知機能評価
MMSE (30点満点/23点以下で認知症疑い)・HDS-R (30点満点/20点以下で認知症疑い)。MCI 域の拾い上げにはMoCA-J (25/26 点以下)。仮性認知症疑いでは GDS-15/PHQ-9 を併用。
頭部 MRI院内で当日実施可
海馬・嗅内野の萎縮(AD:VSRAD で定量)/前頭・側頭前部萎縮(FTD:knife-blade)/白質病変・多発ラクナ(VaD)/硬膜下血腫・脳室拡大(治せるもの忘れの除外)/微小出血の確認(抗Aβ抗体適応評価)。
スクリーニング採血院内で当日実施
TSH/FT4・B12/葉酸・電解質・腎肝機能・血糖/HbA1c・脂質・必要時 梅毒(TPHA/RPR)。もの忘れ外来のルーチン項目 として全例で実施し、治療可能な原因を確実に除外します。
必要時の追加検査と専門連携外来〜紹介
病型のあたりがついた段階で、確定診断・治療適応評価のための追加検査を組み合わせます。
DLB(レビー小体型)疑い
MIBG 心筋シンチ/DAT スキャン/PSG(睡眠ポリグラフ)
AD 確定・抗Aβ抗体療法検討
アミロイド PET/髄液検査/ApoE 遺伝子検査 認定施設で実施
FTD(前頭側頭型)疑い
神経心理士検査/脳血流シンチ
VaD(血管性)疑い
頸動脈エコー/心エコー/心電図
治療の組み立て
病型ごとに薬剤・非薬物・連携の重みが変わります。AD ではコリンエステラーゼ阻害薬・メマンチン に加えて抗Aβ抗体療法(疾患修飾薬) が選択肢に加わりました。DLB はドネペジル+少量ゾニサミド、FTD は SSRI 中心、VaD は脳卒中再発予防そのもの が治療の柱です。
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ChEI / コリンエステラーゼ阻害薬
ドネペジル/ガランタミン/リバスチグミン
アルツハイマー型・レビー小体型に使う基本のお薬。飲み薬と貼り薬 があり、進行を半年〜1年ゆっくりにする のが目標。
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AD・DLB に保険適応がある基本のお薬。飲み薬(ドネペジル・ガランタミン)と貼り薬(リバスチグミン) から、副作用や飲み込みやすさに合わせて選びます。受診で気にしていただきたい目安は次のとおりです。
軽度〜中等度の段階で開始 すると効果が出やすい
飲み込みづらい・薬をよく飲み忘れる方には貼り薬 が選択肢
開始後は吐き気・食欲低下・脈の遅さ などが出ていないかをチェック
進行を止める のではなく、ゆっくりにする のが現実的な目標
NMDA / メマンチン
中度〜高度 AD への併用
中等度以上のアルツハイマー型に、ChEIと組み合わせて 使う飲み薬。興奮・攻撃性をやわらげる効果も。
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中等度以上の AD に保険適応があり、ChEI と併用 するのが標準。興奮・攻撃性などのつらい症状を和らげる効果も期待できます。受診で気にしていただきたい目安は次のとおりです。
ChEI を使っていても進行が目立つ と感じるときに上乗せの選択肢
興奮・攻撃性・夜間の不穏 でご家族の負担が大きいときも検討
開始後は傾眠・めまい・便秘 が出ていないかをチェック
腎機能が下がっている方は用量を慎重に 調整
DMT / 抗Aβ抗体療法
レカネマブ/ドナネマブ — 早期 AD への DMT
アルツハイマー型の原因物質を取り除く 新しい点滴治療。軽症のうちに始める ほど効果的。当院で早期発見し認定施設へ紹介します。
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アルツハイマー型の原因物質を取り除く新しい点滴治療。受診を急いでいただきたいのは、対象がMCI〜軽度 AD の早期段階に限られる ためです。気になるサインがあれば、認定施設での精査をスムーズにつなぐためにも当院で早めに評価します。
対象は早期段階のみ (MCI due to AD・軽度 AD)。進行してからでは適応外
事前にアミロイドβの蓄積を確認 する精査が必要(認定施設で実施)
進行を止める のではなく、進む時計をゆっくり回す 治療4 5
定期的なMRI モニタリング で副作用(脳浮腫・微小出血)をチェックする
当院の役割:早期発見と認定施設へのスムーズな紹介
NON-PHARM / 非薬物療法・生活介入
運動・認知刺激・社会参加・脳卒中予防
薬と同じくらい大切なもう一つの柱。運動・難聴対策・血圧管理・社会参加 で、認知症の45% は予防できると報告されています。
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薬と並ぶもう一つの柱。14 のリスク因子 の管理で認知症の45% が予防可能とされ3 、診断後の段階でも進行をゆるやかにする土台になります。日常で意識していただきたい柱は次のとおりです。
運動 :速歩や体操を週 150 分(息が少し弾む程度)
難聴の補正 :補聴器の使用で認知機能維持に効果12
血管リスク管理 :高血圧・糖尿病・脂質・心房細動を中断しない
社会参加・回想法・音楽 :人との会話・楽しい体験を増やす
鑑別の手がかり 4 大病型と混合型・除外候補
最初の問診と画像でどの方向に振り分けるか をまとめました。当てはまる項目が多い病型を本筋に置き、必要に応じて専門検査(MIBG 心筋シンチ/DAT スキャン/アミロイド PET/髄液検査 )で確認します。
病型ごとの代表的な手がかり
AD(アルツハイマー型)
症状
年単位で緩徐に進行 する記憶障害/見当識障害/物盗られ妄想
検査
MRI で海馬萎縮
DLB(レビー小体型)
症状
認知の動揺+具体的な幻視+RBD+パーキンソニズム
検査
MIBG 心筋シンチで取り込み低下/DAT スキャン陽性
FTD(前頭側頭型)
症状
性格変化・脱抑制・無関心が前景
検査
MRI で前頭・側頭前部の限局性萎縮(knife-blade atrophy)
VaD(血管性)
症状
脳卒中既往+階段状の段階的悪化 +巣症状(麻痺・構音障害)
検査
MRI で白質病変・多発ラクナ・戦略的部位の梗塞
関連する病型や、除外が必要な原因
混合型
症状
AD と VaD が併存/高齢になるほど比率は上がる
検査
MRI で海馬萎縮+白質病変が併存
治せるもの忘れ
症状
数週〜数か月の急進性 /歩行障害・尿失禁/頭部外傷既往
検査
頭部 MRI/甲状腺機能・B12・葉酸の異常
仮性認知症(うつ)
症状
「分からない」と即答/日内変動/ヒントで思い出せる/不眠・食欲低下
検査
GDS-15/PHQ-9 で抑うつスクリーニング
NCSE(非けいれん性てんかん重積)・代謝性脳症
症状
意識変容が日内変動/急性〜亜急性の経過
検査
EEG(脳波)/電解質・肝腎機能の採血
こんな症状はすぐ受診を
経過の早い/意識変容を伴う認知低下は救急・専門評価が必要です
数週間〜数か月で急に進行 するもの忘れ → CSDH/NCSE/代謝性脳症/自己免疫性脳炎を最優先で除外
意識がもうろうとして戻らない /けいれん を伴う認知低下 → 救急受診
急な片麻痺・呂律不良・顔のゆがみ+認知低下 → 脳卒中 の可能性
「死にたい」「消えてしまいたい」と訴える → 重症うつ病・自殺リスク評価が必要
本人が運転で危険な状況 を起こしている → 運転中止の判断と公安委員会連携
抗Aβ抗体療法中に頭痛・嘔気・視覚異常・けいれん → ARIA-E の可能性、緊急 MRI
あなたの認知症の緊急度をご確認ください
緊急
すぐに救急受診
意識がもうろうとして戻らない /けいれん
突然の頭痛+意識変容(くも膜下出血疑い)
急な片麻痺・構音障害を伴う認知低下(脳卒中疑い)
119に電話する
注意
数日以内に受診
数週〜数か月で急進性のもの忘れ
転倒既往+認知障害(CSDH を最優先除外)
幻視・パーキンソニズム+認知低下(DLB 疑い)
抗Aβ抗体療法中の新規神経症状(ARIA 評価)
0942-42-1155 に電話
相談
予約して受診
緩徐進行のもの忘れ・段取り障害
家族から見て性格・行動が変わってきた
軽度認知障害(MCI)の段階で評価したい
WEB予約・アクセス
よくある質問
認知症は治る病気ですか?
完治するタイプもあれば、完治はしないが進行を遅らせるタイプもあります。 大事なのは「どれに当てはまるか」を最初に見極めることです。
最優先 ①「治せるもの忘れ」は治療で改善する
iNPH(特発性正常圧水頭症)/CSDH(慢性硬膜下血腫)/甲状腺機能低下/ビタミン B12 欠乏/うつ病性仮性認知症 。これらは原因を治療すれば認知機能が回復するため、外来診療ではまずここを除外 します。当院は MRI + 採血で初日に大きく振り分けます。
② 神経変性疾患(AD・DLB・FTD)は完治しないが、進行を遅らせる治療がある
アルツハイマー型・レビー小体型などはChEI(コリンエステラーゼ阻害薬)/メマンチン で進行を半年〜1年ゆっくりにできます。早期 AD では抗Aβ抗体療法(レカネマブ・ドナネマブ) で進行をさらに緩やかにする選択肢が加わりました。MCI(軽度認知障害)の段階で生活介入を始めれば、ここに進む手前で押し戻せる可能性もあります。
③ VaD(血管性)は脳卒中再発予防が治療そのもの
高血圧・糖尿病・心房細動・脂質異常症 の管理が、そのまま認知症の進行抑制になります。脳卒中を起こさせない=認知症を進めさせない、というシンプルな図式です。
いずれの場合も早く気づくほど、できることが多い のは共通しています。「年のせい」と諦めずにご相談ください。
レカネマブ/ドナネマブ(抗Aβ抗体療法)は当院で受けられますか?
早期発見・スクリーニングは当院、導入(投与開始)は認定施設、6 か月以降の維持投与は当院で継続可能 という3段階の連携で受けられます。対象はMCI due to AD / 軽度 AD で Aβ 病理が確認できる方です。
① 当院で早期発見・スクリーニング
MMSE/HDS-R/MoCA-J + 頭部 MRI + 採血 で対象になりそうかを評価し、必要に応じて学会認定の大病院へ紹介します。「対象になるかどうかをまず知りたい」という方も当院で相談できます。
② 認定施設で導入(投与開始)
紹介先でAβ PET / 髄液検査 / MRI モニタリング / ApoE 検査 を行い、適応が確認できれば投与を開始します。ARIA(脳浮腫・微小出血) のリスク説明と初期モニタリングは導入施設が担います。
③ 当院で維持投与(導入後 6 か月以降 )
導入後 6 か月以上が経過し、状態が安定した方は当院で維持投与を継続可能 です。次回投与・経過観察・MRI フォローを通院の負担を抑えて続けられます。
家族の様子が変わってきたが、本人は受診を嫌がります。どうすればよい?
本人を無理に説得しなくても、入り口を変える・ご家族だけで相談する・訪問評価を頼む、の 3 つの選択肢 があります。状況に合うものから始めれば大丈夫です。
① 入り口を変える(本人が受け入れやすい理由で受診)
「もの忘れ」を主訴にせず、健診・脳ドック・血圧・頭痛・めまい など、本人が納得しやすい理由で受診する方が多いです。当院ではこれらの枠でも認知機能評価を組み込めます。
こんな声かけが使えます ・「最近血圧 が気になるから、一緒に診てもらおう」 ・「脳ドック で頭の中を調べてもらえるって。一度受けてみない?」 ・「頭痛(めまい) が続くと心配だから、ついでに診てもらおう」
② ご家族だけで相談する(ご本人の同伴は不要)
ご本人を連れてこなくても、ご家族だけで情報提供と方針相談 ができます。今の様子・困りごと・今後の見通しを一緒に整理し、無理のない受診の進め方を一緒に考えます。
③ 地域包括支援センターと連携した訪問評価
どうしても来院が難しい場合は、地域包括支援センターと連携した訪問評価 を検討できます。ご自宅で生活状況を確認しながら、必要な支援につなぎます。
アルツハイマー型と他の認知症はどう見分けますか?
「どう進むか(経過パターン)」をまず聞き取り、前景の症状・MRI・必要なら専門検査で確定 します。経過のしかたで大きく3つに振り分けると見通しがつきやすくなります。
① 緩徐進行型 — AD (記憶優位)/FTD (性格・行動優位)
年単位でゆっくり進む経過。記憶障害・物盗られ妄想 が前景で MRI で海馬萎縮 が見えれば AD 寄り、性格変化・脱抑制・無関心 が前景で前頭・側頭前部の限局性萎縮 が見えれば FTD 寄りです。
② 動揺・幻視型 — DLB (レビー小体型)
日や時間ごとに調子が大きく変わる認知の動揺 +具体的な幻視 +パーキンソニズム +RBD(レム睡眠行動異常) が手がかり。MIBG 心筋シンチ/DAT スキャン で確認します。
③ 段階的悪化型 — VaD (血管性)
脳卒中の既往やイベントごとに階段状に悪化 し、麻痺・構音障害などの巣症状 を伴うパターン。MRI で白質病変・多発ラクナ・戦略的部位の梗塞 を確認します。
確定にはAβ PET / 髄液検査 / MIBG / DaT などの専門検査が必要なことがあります。各病型の症状・検査の対応表は「4大病型 — 鑑別の手がかり」 をご覧ください。
家族にできる予防・進行抑制の方法は?
最新の Lancet Commission3 では、14 のリスク因子の管理で認知症の 45% が予防可能 とされています。重なる領域を 4 カテゴリで押さえると、家庭でも取り組みやすくなります。
① 運動と認知活動
有酸素+レジスタンスを週 150 分 (散歩・軽いジョギング・体操)。読書・パズル・会話など認知刺激 を日常に入れることも、認知予備能を底上げします。
② 血管リスクの管理
高血圧・糖尿病・脂質異常症・心房細動 のコントロールは、脳卒中再発予防そのものが進行抑制に直結します。VaD だけでなく AD・混合型でもリスク低減の効果が示されています。
③ 感覚と社会的つながり
難聴は補聴器で補正 することで認知機能低下の抑制が報告されています12 。家族との会話・地域活動・趣味の場への参加など、社会的孤立を避ける 工夫も予防介入の一部です。
④ 生活習慣(禁煙・節酒・睡眠・うつ)
禁煙・節度ある飲酒・睡眠の質の確保 に加えて、うつ症状は早めに相談 を。これらは単独の効果は小さくても、組み合わせるほど予防効果が積み上がります。
運転免許や財産管理はどうしたらよいですか?
運転は法律上中止が原則 、財産管理は判断能力があるうちに準備 を始めるのが基本です。どちらもご家族だけで抱え込まず、診断時点から一緒に整理していけます。
① 運転 — 中止の判断 と免許返納
認知症と診断された場合、道路交通法 に基づき免許の自主返納 または公安委員会の判断 となります。当院では診断書の作成、ご家族との運転中止のタイミングの相談 、自主返納の進め方の説明までサポートします。
② 財産管理 — 判断能力があるうち の準備
任意後見契約 は本人に判断能力があるうちに締結する必要があります。すでに判断能力が低下している場合は成年後見 の利用を検討します。当院は地域包括支援センター・社会福祉士 と連携し、介護保険申請から後見手続きまでの窓口をご家族と一緒に整理します。
監修
院長 堤 健二(脳神経外科専門医・医学博士) 医師 芝原 友也(神経内科専門医・脳卒中専門医・認知症専門医・総合内科専門医・医学博士)
最終更新日
2026-05-06
参考文献・ガイドライン(12 件)
日本神経学会『認知症疾患診療ガイドライン 2017』医学書院.
厚生労働省 朝田班「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」2013.
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Sims JR, et al. Donanemab in early symptomatic Alzheimer disease (TRAILBLAZER-ALZ 2). JAMA 2023;330(6):512-527.
日本神経学会・日本認知症学会・日本老年精神医学会『レカネマブ適正使用指針』2023/『ドナネマブ適正使用指針』2024.
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本ページは「認知症(4大病型)」に関する一般的な医学情報の提供を目的としており、個別の診断・治療方針を示すものではありません。症状や経過には個人差があります。急に進行する認知機能低下・意識変容・けいれんを伴うもの忘れは、慢性硬膜下血腫・非けいれん性てんかん重積・自己免疫性脳炎・脳卒中など緊急対応が必要な病態のサインのことがあります。「年のせい」と諦めず、ためらわず受診してください。